木製胡弓製作

木製大胡弓の製作2012.2.124丁上.jpg

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胡弓の演奏・講演において、胡弓の体験講座を体験していただくために、また、継続した胡弓講座のために、多数の胡弓を準備する計画を進めています。これまでの製作技術と材料・道具を活用して、この講座に活用できる木製大胡弓を、製作することが可能となりました。材料や手間をかけた奏用レベルとまではいきませんが、かなり良い音の木製代胡弓ができつつあります。棹1.jpg
三味線の棹をもとに、弦長68cm程となるように棹の長さを短くします。この長さは、長年の大胡弓の製作・設計で得た値です。絹糸の3の糸の18番やギターのライトまたはコンパウンドの1弦が活用できます。この講座用は、金属弦を使用する予定です。
棹2.jpgよい音を引き出すためには、このように、黒檀などの指板を棹に張り、曲面仕上げを施しますが、体験用は基本的に、この工程は行いません。音色は、ある程度良い音がします。表板全体.jpg胴体の厚みは、三味線より3cm薄くしてあります。最も重要なことは、1.表板・裏板とも、よい音のする板を使うことです。今回、杉板を使用しました。2.板の中央部分は、4mm程度、側面板に接着する部分は1mm程度にまで、薄くします。表板の裏側の低音側には、バスパー(力木)が張り付けられています。裏板.jpg表板に、サウンドホールを開けます。ここから魂柱を差し込みます。表板と魂柱.jpg表板下部に、弦から表板を保護するためと、3本(または4本)弦の、並びを駒の曲線にあわせるために、2弦を一番高くした象牙片を張り付けます。下駒.jpgこうして、仕上がった木製大胡弓に弦をはり駒の高さを調整して、音色を確認します。その音色をお聞き下さい。木製大胡弓(塗り前の段階)「浜千鳥」駒未完成.jpg仕上げ前の駒です。最終的には、駒の下部を削り、足を作ります。塗り1.jpg塗り2.jpg拭き塗り油性ニスを塗りました。

乾燥.jpg弓中央は白木の弓.jpg2011.3月下旬から木製の胡弓・大胡弓の製作に取り組みました。現在、名古屋市天白区胡弓教室の貸し出し用に2丁、演奏用に1丁,木製大胡弓を製作しています。

小胡弓1.jpg2011.3月下旬、東日本大震災被災地での追悼演奏のため、過酷な環境でも演奏できる小胡弓を製作。大胡弓1.jpg5月、被災地の避難所での演奏用として、木製の大胡弓を製作。雨天時のキャンプや移動・搬入で多少濡れても耐えうる大胡弓として製作。ただし、音にはこだわり、表・裏板の加工や魂柱の調整など細部にわたって、音を追及。弦は、湿気に強い金属弦を使用。胴体加工.jpg2011.11月、絹糸を使った木製胡弓の製作を開始。胡弓教室用に2丁、演奏用に1丁製作。胴体のカンナがけ.jpg三味線の胴を利用。板を張り付けるので、板の厚さ分カンナで削る。演奏用と入門用.jpg演奏用は、さらに薄く削ります。棹も、縞の入った紅木を加工しました。
棹を縮める.jpg上が三味線の長さ、下が大胡弓の長さ。短棹三味線よりもさらに数センチ短い。内側加工.jpg胴の内側も削ります。板の振動する面積を広くするために接着面積を強い策して行きます。演奏用胴内側加工.jpg教室用の木製胡弓も、非常に手間と時間がかかりましたが、演奏用はさらに、追い込みます。内側もグラインダーで、ギリギリまで削ります。特に、棹との接続部分近くまで、振動するように追い込みます。胴体の裏板加工.jpg教室用木製胡弓のサウンドホール。演奏用表板サウンドホール加工.jpg演奏用の木製胡弓のサウンドホールは、三日月型にくり抜きます。
表板のラフ加工1.jpg裏板の加工。ベルトサンダーでラフ加工し、棹を取り付け弦を張り、音を確かめながら仕上げの削りをしていきます。力木の接着.jpg力木を表板に取り付けます。胴体の接着.jpg胴体と表板・裏板を接着します。演奏用と入門用.jpg左が教室用、右が演奏用の胴体です。演奏用指板と棹.jpg演奏用の棹は、黒檀の指板を貼り付け、曲面仕上げを行います。

弓の調整3.jpg製作した弓6本の毛に松脂を塗り、実際に演奏をしながら調整します。弓本体の製作で、重心を調整してあるので、毛を張った状態でも、ほとんど演奏しやすい弓となっていましたが、一本だけわずかに弓本体側に重心があり、これを毛の方にずらす必要がありました。弓の調整2.jpg弓の本体の曲がりのした10センチほどの位置に、こてをあててわずかに前にずらし微妙に、反時計回りにねじりを入れます。職人的な感覚です。二十本以上、弓を製作した中で、感覚的につかんでいます。弓の調整.jpg弓を握らずに、掌にのせた状態でも演奏できるのが理想です。三の糸を奏でたときに、胴体と弓本体にわずかに隙間ができ、毛は弦を奏でることができる状態が、演奏しやすいゆみとなり、力が抜けた状態で表情豊かに音を奏でることができます。弓の毛を張る.jpg弓の毛を張ります。根尾部分に象牙を張り付ける.jpg胴体の表板の下部の糸の通る部分に象牙を張ります。弦の圧力によって表板が削られるのを防ぐためです。

魂柱3.jpg魂柱をサウンドホールから入れます。先端の曲がったラジオペンチが役に立ちます。魂出し.jpg魂柱を調整します。魂柱調整2.jpg棹穴からも調整します。魂柱の通ため、中子先をわずかに削る.jpg魂柱の通り道を作るため、棹の中子先を削ります。木製大胡弓入門用完成.jpg完成した木製大胡弓と弓です。やさしく温かい響きです。